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  1. 当初は「100kg以上の鉄のかたまりが二足歩行するなんてあり得ない」と言われた
  2. スムーズな二足歩行を可能にしたのはリハビリ専門家の一言だった
  3. 問題に対して回答が必ずあるとは限らないし、正解も1つではない
  4. 日本人でなければできないモノづくりのアプローチがきっとある

第2回:スムーズな二足歩行を可能にしたのは、まったく別分野の方の一言だった

宇田川
30年前には「不可能だ」と言われた二足歩行を、いまでは多くのロボットが実現しています。特に高西先生の研究室で作られたWABIAN-2Rは、ふつうの街を歩いたり、イベントで表彰状を手渡すデモンストレーションをして、テレビや新聞雑誌でも頻繁に紹介されています。
高西
実はWABIAN-2Rは、他の二足歩行ロボットと大きく違うところがあります。身体の部位の質量比や、関節をはじめとする長さの比率を、人間と同じにしていること。そして、最大のポイントは人間と同じように膝を伸ばしてスムーズに歩行することです。
宇田川
そういえば、これまでのロボットの歩き方というと、膝を大幅に曲げたままで「移動する」ちょっとぎこちないイメージが強かったですね。
高西

写真:WABIAN-2R

ゴリラなども二足歩行が出来ますが、膝を曲げたままです。しかし、人間だけが唯一、膝を曲げてから完全に伸ばします。そして、このときの体重移動を示したグラフには2つのピークが現れます。しかし、これをロボットで実践しようとすると重心と加速度を同時にコントロールするのにどうしても分母がゼロになる分数の計算が必ず入ってくるため、コンピュータでは計算できませんでした。コントロールができないので、多めに膝をまげたままで歩くしかなかったのです。それは大きな課題点でした。
ところが「人間の二足歩行は骨盤がポイントになっている」というヒントをくれた方がいました。さっそくWABIAN-2Rに骨盤を入れ、これが上下左右に動くようにしたところ、ちゃんと膝を伸ばして歩くことができるようになりました。もちろん人間と同じように2つのピークも現れました。

宇田川
何十年にもわたってみんなが取り組んできた問題が解決した瞬間ですね。さぞかしうれしかったでしょう。
高西
実はですね、「骨盤」というヒントをくれた方は、ロボット研究とはまったく別の分野の方だったのです。この方は当時、早稲田大学のドクターコースに在籍していたある県のリハビリテーションセンターの研究員の方でした。我々ロボット研究者にはまったくなかった発想を、その道のプロが教えてくれました。
宇田川
まさに異分野のコラボレーションですね。
高西

また、この方は自分のスキルを上げようという意欲が大変に強い方でした。

ひとつの企業に長く所属していると、やりたいこととは別のことで多くの時間をとられたりしますから、それを避けて、研究所から大学に戻って先端技術を身につけ、また元の研究所へ戻るといった生き方を実践しているすばらしい方です。

宇田川
これまでは、エンジニアというものは企業に就職して力を発揮するものだという固定的なイメージがありましたが、今後は、さまざまなワークスタイル、ライフスタイルが可能になるでしょう。また、そういう多様性のあるワークスタイルを実践することで、自分がこだわりを持っている分野のスキルを高めたり、視野を広げることができるのですね。
高西

写真:高西氏

これからのエンジニアには、コラボレーションやコミュニケーションの能力も不可欠です。人型ロボットに限らず、これからのモノづくりはますます複雑になり、総合技術化が進みますから、多くの人が力を合わせなければなりません。ですから、専門分野の知識はもちろんですが、自分と領域が違う人とも協調できる能力がますます重要になってきます。

宇田川
それは私も現在の仕事を通じて思うところが多々あります。今回もすばらしいお話ありがとうございました。次回は“エンジニアに必要な経験”についてお話を伺いたいとお思います。よろしくお願いいたします。
写真:高西 氏プロフィール
高西 淳夫 氏(たかにし あつお)
1956年福岡県生まれ。早稲田大学理工学術院教授。二足歩行ヒューマノイドなどロボットの研究・開発の世界的な第一人者。ロボット産業振興会議副会長、日本学術振興会各種審査員、日本機械学会委員、日本ロボット学会委員などを務める。



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