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  1. 当初は「100kg以上の鉄のかたまりが二足歩行するなんてあり得ない」と言われた
  2. スムーズな二足歩行を可能にしたのはリハビリ専門家の一言だった
  3. 問題に対して回答が必ずあるとは限らないし、正解も1つではない
  4. 日本人でなければできないモノづくりのアプローチがきっとある

第3回:問題に対して回答が必ずあるとは限らないし、正解も1つではない

宇田川
第1回目のお話の時に、逆境のときこそチャンレジ精神を燃え立たせた加藤先生のエピソードをお聞きしましたが、いまの若い人は、そういう「エンジニア魂」が少なくなっていると感じておられますか。
高西
受験教育の弊害が関係していると思います。入学したばかりの学生たちは、「回答が必ずある、しかも、正解は1つだけ」という発想が共通しています。
宇田川
しかし実際の研究開発では、回答がいくつもあり、それを探していく過程が大切なのですね。
高西

写真:高西氏&宇田川

また、ちょっとやってダメだとすぐ次に移りがちです。これも受験のときに、回答記入を要領よくやるクセがついているのでしょう。こういう発想のしかたは、どれも、ロボット研究には向いていません。
ところがこういう人でも、何年も一緒になって研究をしていると、問題解決にはさまざまなアプローチがあるのだということを身を持って理解します。たとえば、誰が強制したわけでもないのに、家に帰らないで寝袋で寝ながらいろいろ試してみる。すると、これまでにないすばらしい成形プロセスが見出せたりします。
そうやって成功体験を重ねていくうちに、だんだんエンジニアらしい面構えになってくるのです。企業の場合なら、若い人に成功体験を重ねさせてくれるような上司がいるかどうかが、大事なポイントになるでしょう。

宇田川
成功体験を重ねるには、それなりの時間が必要ですからね。
高西

写真:研究室スタッフ

早稲田大学では、モノづくりの基本姿勢を学生に理解させるための教育的な取り組みも行っています。たとえば、学生に出来上がった回路を見せて、「秋葉原へ行って自分で部品を買って、これと同じものを作ってみなさい」という課題を与える科目があります。
新入生たちが抵抗値をメモして秋葉原へ買いにいくと、何ワットの抵抗かと部品屋さんに聞かれます。そこで初めて、抵抗にはワット数も必要なことを考え直すことになります。さらに、部品屋さんの主人にいろいろ教わってようやく必要なものをそろえて帰ると、今度はハンダづけをどうやればいいかがわからない。知識は持っているのに、ごく簡単な回路を作ることが、彼らにとってはゼロからの体験の積み重ねになるのです。

宇田川
今の子供たちは、理科の教材などでモノづくりの一端を体験することがあっても、すべてがあらかじめキットで提供されるため、あちこちのモノを寄せ集めて、試行錯誤しながら組み合わせた体験がありません。それこそ、キットの中にそろっている部品を1個も残らず使えれば、正解なのですから。
高西
わたしは子どものころから、時計やラジオを分解し、また組み立てて遊んでいましたからね。
宇田川
わたしも、子供のころ電子ブロックや鉱石ラジオを作ってよく遊んだものです。
今回もありがとうございました。いよいよ次回が最終回です。次回は“これからの日本のモノづくり”について高西先生のお考えをお聞かせください。
写真:高西 氏プロフィール
高西 淳夫 氏(たかにし あつお)
1956年福岡県生まれ。早稲田大学理工学術院教授。二足歩行ヒューマノイドなどロボットの研究・開発の世界的な第一人者。ロボット産業振興会議副会長、日本学術振興会各種審査員、日本機械学会委員、日本ロボット学会委員などを務める。



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