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Q38. レジストに関する書籍を教えてください
レジストはスピンコーターで塗布される際にウエハ上に供給された量の大半が捨てられている事に気が付きました。何故、必要以上のレジストをウエハ上に供給する必要があるのか、又、捨てられるレジストの量を削減出来る可能性があるのかどうかについて教えて頂きたいと思います。手元にある書籍等に記載がありませんでしたので、教えて頂きたく思います。宜しくお願い致します。

半導体メーカー就業中の方より
A38.ご相談にお答えします。
◆ ご質問内容:
① 何故必要以上のレジストをウエハ上に供給する必要があるのか?
② 捨てられるレジストの量を削減できる可能性があるのかどうか?
とのご質問について、以下、回答させて頂きます。
◆ 回答:
相談内容を拝見しまして、スピン塗布されたレジストの大半が捨てられていることにお気づきとは、さすがです。日頃の業務の中で、『気付き』があることはとても素晴らしいことです。恐らく、日頃の業務を通して、色々と既にご存知のことも多々あるかと思いますが、重複するところがある場合はご了承ください。
(1) 何故必要以上のレジストをウエハ上に供給する必要があるのか?
スピン塗布のメリットとして、薄膜形成における膜厚の均一性やその精度であり、これに勝る手段はないと言われています。この塗布方法によるレジスト膜厚は、レジストの粘度、溶媒の種類および塗布機の回転数と回転時間で決まり、膜厚やその均一性のある程度の精密な制御を塗布シーケンス(回転数、加速度、時間、温度、滴下量、ステップ等)でできることも利点の一つです。
一方で、デメリットは、ご指摘の通り、90%以上の薬液が捨てられている点です。ここで注目頂きたいことは、90%以上の薬液が捨てられている塗布方法とはいえ、スピンして精度高い膜を形成するために『必要以上の量』ではなく、捨てられる薬液を含めた総量が『必要な量』ということになります。
逆に、滴下量を単純に減らした場合、膜厚のばらつき(均一性)が悪化してしまったり、ウエハエッジ部のカバーレッジ不具合が発生したり、下地に段差があるような工程では塗布不良が発生するといった可能性があります。不良発生の抑制を考慮した最適な量が現在設定している量ということになります。
(2) 捨てられるレジストの量を削減できる可能性があるのかどうか?
塗布のレジスト滴下量の削減は、プロセス・コスト改善として重要です。少しでもレジストの量を削減する手法に関してですが、機械メーカーの資料や業界紙などで発表されている手法を参考にすると、現実的な方法として以下の例があります。
・レジスト膜精度(均一性、塗布状態等)を落とさず(もしくは改善して)、コータデベロッパーの塗布シーケンスの条件最適化より、滴下量を減らせる条件を出す方法です。具体的には、タグチメソッドを用いて塗布条件最適化をするなどです。参考資料としては、インターネットで、キーワードに『レジスト 塗布』で検索して頂くと、『タグチメソッドを用いたレジスト塗布条件設定の効率化』(SANYO TECHNICAL REVIEW)という内容の資料がありますので、探してみて参考にしてみては如何かと思います。
・次に、コータデベロッパー装置側の工夫として、レジスト塗布量を削減する工夫(方法)があります。実際お使いのコータデベロッパー装置メーカがどちらのものか、どの機種かにもよりますが、もし職場の方でトラック装置やレジスト塗布に詳しい方がいらっしゃれば、聞いてみるのは如何でしょうか?恐らく既に導入されたプロセスになっているのではないかと思います。大昔、塗布時不要となったレジストを回収して、リサイクルする方法を研究、開発を試みたという話を聞いたことがありましたが、電子精密材料だけに難しいようですね。
以上、ざっくりではありますので、不明な点等がありましたら遠慮なくご連絡ください。